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フクジュソウ キンポウゲ科の多年草
有毒、根は強心剤、利尿剤として用いられるそうだ。 |
何にもない庭に、僅かな黄色で、急に華やかに春めく。
葉に先立ち咲く「フクジュソウ」だ。
旧暦の正月の花として、漢字で「福寿草」と書く。
近所の「トシちゃん」に「うちの福寿草を見に来てや」と言われている。
「トシちゃん」の家の裏には、幾種類ものツバキが植わり、
間の地面をフクジュソウで埋めていて、見事なものだ。
何年か前まで、菜園として「トシちゃん」の家族の食を賄っていた畑だ。
そして、その畑の一部を義父母が借り、野菜づくりを楽しんでいた畑だ。
「トシちゃん」の二人の息子さんは夫々所帯をもたれ、同じ敷地に住まわれている。
家族が増えたのに、菜園は花畑になった。
そしてうち。
昨年義父が亡くなり、義母は足腰弱くなった。
義父は死期が近づいても、動ける間は畑に出ていた。
私は、弱った義父といっしょに畑を耕し、やがて、一人で畑を耕した。
そして、私は、今、広島県呉市にいて、畑に思いをはせる。
「こんな遠方では、もう無理かしらね、僅かな畑でもね。」と未練がましい。
春の畑の、黒い土に整列した緑が好きだ。
「トシちゃん」のツバキも福寿草も、もう、すっかりあの畑に根付き、
毎年、この時期には見事な花を咲かせる。
そして、うちの庭のこの福寿草も。