2012/03/27

2012-03-27:オオイヌノフグリ


















この写真は、3月の半ばほどに撮られたもの。
連続する暖かい日は新しい季節の到来の予感。
3月半ばとは、そんな日々のことでした。
その一方で、昨日の午前中には雪が降り、
4月間際にきて、まだ冬を名残惜しむような寒さです。
三寒四温、うん、まさしく。
いくら早い春に咲くからといっても
さすがに雪は想像しなかったでしょう。
このオオイヌノフグリ、想像するに、勇み足だったんでしょう。

さて、オオイヌノフグリを見ると、
その度ごとに私は3歳ごろの自分に戻ってしまいます。
「イヌの顔と似てるでしょ。だからオオイヌノフグリ」
耳の奥で響くのは姉の声。
毎度のように聞こえる、未だ鮮やかなその声に
ぷぷと笑いをひとしきり蓄えて、33歳の現在の自分に還ってきます。

姉に「イヌの顔と似てるでしょ」と言われたとき、
私は、少し間を置いて、「うん、似てるね」と答えたのでした。
でもその後もずっと何年も、見るたびに
「どう似ているのだろう」という疑問がふつふつと頭を支配し、
「ひょっとしたら、“オオイヌノフグリ”って、
犬も顔を近づけたくなるようなかわいい花ってことかな」
なんていう逃げ道などを、いくつもいくつも構えるほどに
この名前と花の顔に、静かに心をかき乱されたものです。
「だって、お姉ちゃんが似てるっていうんだもの。
似ているように見えない私は恥ずかしい」なんて、従順な妹でしょう。
そんなことで、数ある春の花の中でも、
オオイヌノフグリは強く強く、私に春を訴えてくる花となったのでした。

実際のところ、
「名前のフグリとは陰嚢の事で、実の形が雄犬のそれに似ている事からこの名前が付いた。ただし、これは近縁のイヌノフグリに対してつけられたもので、この種の果実はそれほど似ていない。だから、正しくは、イヌノフグリに似た大型の植物の意である」
というのが由来のようです。(出典:Wikipedia「オオイヌノフグリ」
雄犬の「それ」と似ている果実(種)を持つイヌノフグリと
近縁にあってちょっと大きな花だから、なんですね。
「先に名付けられたのがイヌノフグリでなくこちらなら、
もっとかわいい名前がつけられていたことでしょう」
などというコメントのあるサイトもありました。


つまり、イヌの顔と花の顔は違うように見えてもよかったのです。
後年、姉に「ね、似てないよね」と言うと、
「そんなこと思ったこともないし、そんなこと言ったかしら」
というような、つるんっとしたハテナ顔で返されたのでした。


姉の言動への少しくらいの疑問はいつもぐっと胸にしまい込んだものでした。
そうしているうち、暗黙のうちに姉の挙動は、
私にとってたくさんのことの判断の基本になっていたように思います。
逆に、姉から見た「イヌの顔と似てるでしょ」は、
私に花を愛でる楽しさに共感してほしかった姉の心情が伺えて愛おしい。
とても些細なオオイヌノフグリの話ですが、
このことは私と姉の関係を象徴しているようで、
オオイヌノフグリを見る度にやっぱりぷぷっと笑ってしまいます。

昨日、季節外れの雪に見舞われ、この花は道の中で目立たず、
花を閉じ(実際に、開いたものを閉じたのかどうかは、おいといて)
じっと身をこごめているように見えました。

春よ、早く、早く、こい。

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