2011/08/01

2011-08-01:カタバミ


















「すいば」「ねこあし」「すずめくさ」「すずめの袴」など、
別名は『日本方言大辞典』に登録されているだけでも
180種類以上になるそうです。
そのくらい、普段、足元にじっと目をこらすと
すぐに見つけられる、言ってみれば“当たり前”の植物なのです。

どこにでもすぐにある、というので、
うちでもあんまり大事にはされていません。
たぶん、植えたものではなく、どこかからやってきたのでしょう。
クローバーによく似たハート型の葉は、
こちらにも四葉、六葉の多葉変異体があるそうですが、
環境に耐える強靭なツクリにより、発生率は低いとのこと。
そのくらい強い植物です。

白洲正子も
俗に「すずめの袴」ともいうが、
それはハート型の葉にたっつけ袴を連想したからで、
雀にはお似合いの服装であろう。
野草にはきまって可愛らしい別名があるものだが、
必ずしも子供たちが名付親ではなく、
大人も昔はその程度の童心を持ち合わせていたに違いない。
※『草づくし』(新潮社/とんぼの本)
と記していますが、確かに、カタチとしては、
花よりもハート型の3枚ずつの葉に人気があるよう。
文様にもなりやすく、小袖などで
大胆な意匠として使われているものもあります。
長宗我部元親家など戦国大名の家紋としてもメジャークラスですね。

引用を続けると、特にこの部分が好きなのですが、
鹿児島では昔から女が鳳仙花で、爪を赤く染める風習があった。
その場合、かたばみの葉を用いると、
酸味(蓚酸という)によって、一段と美しく発色する。
私の祖母は薩摩の女だったので、子供の頃はたわむれに、
鳳仙花とかたばみで爪を染めてくれたものである。
今ははつかしい憶い出になっているが、
鳳仙花は蛇が嫌うので、女の身だしなみの一つになっていたらしい。
別名を「爪紅草」といい、室町時代に中国から渡来したと聞くが、
中国では古くから行われていたのであろう。
マニキュアが輸入された時、
「何だそんなもの、昔からやってるじゃないか」と、
祖母は小馬鹿にしていた。
※『草づくし』(新潮社/とんぼの本)
慎ましやかな日々の美しさのために
このような“当たり前の草”が古くから使われていると知ると、
少し敬意を払わなければという視線になりそうです。

ちなみに、花は春から秋にかけて。
葉っぱは、雨の日や夜になると、閉じてしまうそうです。
少し長くなってしまいましたが。

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