2013/05/06

2013-05-05:クマガイソウ

クマガイソウ。大きく膨らんだ唇弁がどっしりと。いくつかの鳥類とも似てなくない...か。






































うちを訪れてくる知人のうちの数人くらい、
「せっかくやから庭を見ちゃろと思って」と
玄関でなく庭を回ってやってくる人もいる。
そのうちの一人が、父の妹で、私のおばさん。

ある日、おばさんは、元気よく「やあ」と手を挙げながら現れた。
「ここの庭は、野草がのびのび生えるのにちょうどええがやねぇ」
ふたりでのんびり、縁側に座って庭を眺める。
「クマガイソウはね、U下さんくの庭に群生しちゅうけど、ここも見事やねぇ」
ふーん、と思いながらクマガイソウに目をやる。

厚くだらしなげな唇で、オーガニックにキメたセクシーポーズ、
それにほんのりの紫の紅。
一本ずつを見れば、確かに、どことなく気高くもキケンな雰囲気が漂う。
でもその一方、大きな唇弁や、エリマキトカゲみたいな大きな襟(葉)は、
なんだかやり過ぎ感もあってやや間抜けだ。
いったい、どこのどなたに向けたアピールなのだろう。
人間に向けてなら、その唇も葉も、
もうほんのちょっとだけ小さいほうが絵になるだろうに。
珍しい花だし、見知らぬ人なら「ほぅ」と感心するのだろうが、
うちの庭でいくつも並んで立っている様は、
なんだか少し滑稽にも思えて笑ってしまう。
そういう「痘痕」のあるものは、
「私しか好きになってあげられないはず」という気分をそそる。
私の好みは、四方八方にバランスよく笑みを向ける花よりも、
クマガイソウみたいに、すべての人にわかりやすくなさそうな花のよう。

「私はねぇ、クマガイソウが好きよ」と言うと、おばさんは、
「私もねぇ、若いころはこういう野草が好きやった。
でもね、今は派手でわかりやすいのがいい」と答えた。
「年をとるといっしょに失われていくものを、“好み”で補いゆうがかもしれん」
そういってもう一度、うちの庭を見まわしてみると、
おばさんの好きそうな花はありそうになかった。
「どうもそんなのは、うちの庭にはなさそうやね」というと、
「まぁ、まぁ、これはこれで」。ウフフと笑ってコーヒーをすすった。

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