2013/05/09

2013-05-09:オキナグサ

オキナグサ。後方にはまだキューティクルを保った若輩者。(さとみ撮影)






































春の二つのうずのしゅげの花は
すっかりふさふさした銀毛の房にかわっていました。
野原のポプラの錫いろの葉をちらちらひるがえし、
ふもとの草が青い黄金のかがやきをあげますと、
その二つのうずのしゅげの銀毛の房は
ぷるぷるふるえて今にも飛び立ちそうでした。 
⎯⎯「おきなぐさ」宮沢賢治

洗濯日和の日が続く連休明け。
うちの庭のオキナグサはそろそろ“ふわふわ時”に。
というか、今朝、庭にぶらりと出てみるまで
もう“ふわふわ時”がきてるのがあるとは思っていませんでした。
これは花のあと、若い果実の時期を過ぎ、
いよいよ成熟のときがきた証し。
去年も記録(2012-04-282012-03-28)しています。
やっぱり私はオキナグサをひいき目に見てしまっているのでしょうか。

私にとってはこの姿は名前の通り「翁」に見え、
だから「オキナグサ」とは、何の疑問も迷いも抱かずに
すっとココロに留まった植物の名と姿だったのでした。
そして「名前のわかるもの」とはつまり、
「好きで興味のあるもの」に他ならないでしょう。

さて、この植物を、宮沢賢治が童話にしたというのを、
こないだ初めて知ったところです。

物語はこんな冒頭から始まります。

うずのしゅげを知っていますか。 
うずのしゅげは、植物学ではおきなぐさと呼ばれますが、
おきなぐさという名はなんだか
あのやさしい若い花をあらわさないように思います。
そんなうずのしゅげとはなんのことかと言われても
私にはわかったような
またわからないような気がします。 
それはたとえば私どもの方で、
ねこやなぎの花芽をべんべろと言いますが、
そのべんべろがなんのことか
わかったようなわからないような気がするのと全くおなじです。
とにかくべんべろという語(ことば)のひびきの中に、
あの柳の花芽の銀びろうどの
こころもち、なめらかな春のはじめの光のぐあいが
実にはっきり出ているように、
うずのしゅげというときは、
あの毛茛科のおきなぐさの黒朱子の花びら、
青じろいやはり銀びろうどの刻みのある葉、
それから六月のつやつや光る冠毛がみなはっきりと眼にうかびます。 
⎯⎯「おきなぐさ」宮沢賢治

中には、
おきなぐさはその変幻の光の奇術(トリック)の中で
夢よりもしずかに話しました。
などのなんともきれいな表現も。
オキナグサを巡る小さくて雄大な世界が広がっています。

とにかく、うちの庭は初夏。
引用ばかりで長くなってしまいました。

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